高血圧

「高血圧治療ガイドライン2019」の改訂

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高血圧とは

血圧とは、心臓の左心室から動脈に血液が拍出される(送り出される)際に血管にかかる圧力のことです。

この圧力が基準値以上の状態が続く状態を高血圧といいます。

血液は心臓のポンプ作用によって全身の血管に押し出されてきます。

心臓が収縮して血液を送り出すときに血圧が最大となり、このときの血圧を「収縮期血圧(最大血圧)」、収縮した後に心臓が拡張するときに血圧が最小となり、このときの血圧を「拡張期血圧(最小血圧)」といいます。

 

血圧は、心臓から送り出される血液の量(心拍出量)と、血管の硬さ(血管抵抗)によって決まります。

心拍出量や血管抵抗が大きくなれば血圧は上がり、心拍出量や血管抵抗が小さくなれば血圧は下がるという関係にあります。

また、運動やストレス、寒冷刺激などによって交感神経系が亢進すると血圧は上がり、リラックスした状態で副交感神経系が亢進すると血圧は下がりやすくなります。

 

「高血圧治療ガイドライン2019」の改訂

高血圧の基準値は、2014年版ガイドラインと同じく140/90mmHg以上とする一方で、「高血圧治療ガイドライン2019」では、正常域血圧の分類と名称が以下のように改訂されました。

「高血圧治療ガイドライン2014」
130~139/85~89 mmHg:正常高値血圧
120~129/80~84 mmHg:正常血圧
120/80 mmHg未満:至適血圧

 

以下に改訂

「高血圧治療ガイドライン2019」
130~139/80~89 mmHg:高値血圧
120~129/80 mmHg未満正常高値血圧
120/80〜89 mmHg未満:高値血圧

 

2014年までのガイドラインでは130~139/80~89 mmHgは高血圧には分類されておりませんでしたが、120~139/80~89 mmHgでは高血圧へ移行する確率が高く、120/80 mmHg未満と比較して脳心血管イベントのリスクが高いというデータがあるため、高値血圧あるいは正常高値血圧の段階からの早期介入が推奨されました。

また、従来の「正常高値血圧」は「正常」を削除して「高値血圧」と改訂されました。
(従来の「正常血圧」が「正常高値血圧」、「至適血圧」が「高値血圧」と改定されています。)

 

なお、「高血圧の分類」については以下のように従来と変更ありません。

「高血圧の分類」
140~159/90~99 mmHg:Ⅰ度高血圧
160~179/100~109 mmHg:Ⅱ度高血圧
180/110 mmHg以上:Ⅲ度高血圧

 

高血圧患者の降圧目標

高血圧が、心血管疾患、慢性腎臓病(CKD)、血管性認知症、日常生活動作(ADL)の低下などの発生リスクを上昇させ、死亡率を上げることは、過去の疫学研究からも明らかであり、血圧管理の重要性についてはますます注意喚起がなされるようになりました。

血圧管理は、併存している合併症によってリスクが異なるため、以下の合併症がある場合には特に降圧目標が厳しくなります。

「高血圧治療ガイドライン2014」
75歳未満、冠動脈疾患、脳卒中既往の降圧目標
140/90 mmHg未満(診察室血圧)、135/85 mmHg未満(家庭血圧)

糖尿病、蛋白尿陽性の慢性腎臓病(CKD)の降圧目標
130/80 mmHg未満(診察室血圧)、125/75 mmHg未満(家庭血圧)

75歳以上の高齢者の降圧目標
150/90 mmHg未満(診察室血圧)、145/85 mmHg未満(家庭血圧)
※忍容性がある場合
 140/90 mmHg未満(診察室血圧)、135/85 mmHg未満(家庭血圧)

 

以下に改訂

75歳未満、冠動脈疾患、蛋白尿陽性の慢性腎臓病(CKD)、糖尿病の降圧目標
130/80 mmHg未満

75歳以上の高齢者、蛋白尿陰性の慢性腎臓病(CKD)、脳卒中既往の降圧目標
140/90 mmHg未満

 

高血圧の基準と降圧薬の開始基準については従来の140/90 mmHg以上とし、130~139/80~89 mmHgの未治療患者には生活習慣の改善を促し、早期から高血圧予備軍への介入を推奨しています。

 

また、75歳未満の患者の降圧目標は原則130/80 mmHg未満に引き下げ、75歳以上の患者の降圧目標も140/90 mmHg未満へ引き下げる方針となりました。

これは、高齢者においては、130 mmHg未満への降圧による腎障害などに注意を要するためとされますが、慢性腎臓病の症状と「CKD診療ガイドライン2018」の改訂(以下参照)で書いたように、日本腎臓学会が提案する降圧目標とは異なります。

「高血圧治療ガイドライン2019」では、「忍容性があれば個別に判断して130/80 mmHg未満を目指す」というただし書きがありますが、いずれにせよ日本高血圧学会による管理目標はより厳格であることがわかります。

 

日本腎臓学会による降圧目標

ちなみに、日本腎臓学会では以下を推奨しています。

(慢性腎臓病の症状と「CKD診療ガイドライン2018」の改訂より)

80歳以上の120/60mmHg以下での血圧管理においては注意が必要です。

日本人を対象とした高齢者高血圧治療に関する大規模臨床試験の結果などでは、降圧レベルと心血管イベント発症の関連は単純な正相関ではなく、到達血圧が一定値を下回った場合にイベント発症がむしろ上昇するJカーブ現象を認めたという報告があり、今回のガイドライン改訂では高齢者の過降圧によるリスクを考慮し、降圧目標を140/90mmHgへ緩めることとなりました。

 

また、糖尿病がある場合については、75歳未満では、尿蛋白がある場合の降圧目標は従来通り130/80mmHg未満ですが、75歳以上では降圧目標を緩め、尿蛋白の有無に関わらず150/90mmHg未満と定めました。

 

ただし、この場合でも起立性低血圧や急性腎障害などの有害事象がなければ(=忍容性があれば)、140/90mmHg未満への降圧を目指すことが推奨されています。

 

薬物による降圧強化が新たに推奨された病態

2014年版ガイドラインと比較して、生活習慣を改善した上で薬物による降圧強化が新たに推奨された病態として、以下が明記されました。

130~139/80~89 mmHgで、以下のいずれかに該当する場合

・75歳未満の高リスク患者 (※)
・脳血管障害患者(血管狭窄なし)
・冠動脈疾患患者

※ 高リスク患者の判定
・脳心血管病既往
・非弁膜症性心房細動
・糖尿病
・蛋白尿陽性のCKD
・65歳以上/男性/脂質異常症/喫煙 の4項目のうち、3項目以上がある
・上記4項目のうちいずれかがあり、血圧160/100 mmHg以上
・血圧180/110 mmHg以上

75歳以上で、収縮期血圧140~149 mmHgの場合

 

降圧目標改訂の理由

今回の降圧目標改訂の狙いは、「非薬物療法を早めにする」ことです。

高血圧状態を長期間放置すると動脈硬化が進行し、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患、心疾患、腎疾患など多くの病気を引き起こす原因となります。

今回、5年ぶりの高血圧治療ガイドライン改訂にあたり降圧目標を引き下げることになった理由については、「システマティックレビューで何千という論文から絞り込んでメタ解析をした結果」であるとガイドライン作成委員会は説明しています。

さらに、「日本の高血圧患者4300万人のうち、降圧目標に到達しているのは2016年時点で1200万人しかいない。これを何とかしないと、心筋梗塞と脳卒中が減らないし、医療費がますます増える。降圧目標到達率の低さは世界共通の課題だ」

と危機感をあらわにし、世界中で降圧目標を引き下げる方針となり、高血圧に伴う病気を予防していくことがますます重要視されるようになったという背景があります。

 

持続的な高血圧によって、血管障害や臓器障害が徐々に進行します。
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