腎臓病

慢性腎臓病の症状と「CKD診療ガイドライン2018」の改訂

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腎臓の働き

腎臓は、ソラマメに似た形をした臓器で腰の辺りに左右1個ずつあります。

腎臓は、糸球体という小さな血管がたくさん集まって構成されており、血液中の老廃物を取り除いてきれいにする濾過装置の役割があります。

腎臓の主な働きは、蛋白質の代謝によって生じた老廃物や毒素を尿中に排泄したり、血液や体液の電解質濃度を一定に保つように調整したり、赤血球を作るホルモンや血圧を調整するホルモン、骨の代謝に関わるホルモンを作るなど、内分泌の調整においても重要な役割を担っています。

 

慢性腎臓病 (CKD)とは

 

「CKD診療ガイドライン2018」によると、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)は、以下の1、2のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続することで診断されます。

  1. 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか、特に 0.15 g/gCr 以上の蛋白尿(30 mg/gCr 以上のアルブミン尿)の存在が重要
  2. GFR<60 mL/分/1.73 m2

このような概念が生まれた背景には、以下のような問題がありました。

・透析を必要とする末期腎不全患者が顕著に増加し、医療経済を圧迫していること
・CKDが末期腎不全への進行リスクであるばかりでなく心血管障害の発症リスクでもあること
・CKDの有病率が予想以上に高く、今後も増加することが危惧されること
・早期発見によって CKD の進展予防、治療が可能であること

「CKD診療ガイドライン2018」の改訂ポイントについての記事もご覧ください。

 

慢性腎臓病の症状

慢性腎臓病の怖いところは、初期には自覚症状がなく気付かない間にゆっくり進行し、やがて不可逆的となり透析を避けられない状態になることです。

慢性腎臓病の主な症状は、蛋白尿、血尿、浮腫(特に顔面や下肢)、高血圧、尿量の変化などがあります。

進行すると、赤血球を作る際に必要な造血ホルモンであるエリスロポエチンの産生が低下して腎性貧血を引き起こしたり、体内の電解質が狂って致死性不整脈の原因となったり、体液量の調整ができないため心不全をきたし肺に水が貯まって呼吸困難となります。

 

その他にも、血液中の老廃物が蓄積して尿毒症といわれる状態になると、治療困難な全身の痒みが一日中続いたり、食欲不振や嘔吐・下痢などの消化器症状、意識障害や昏睡状態になることもあり、このような危険性がある場合は透析を開始しなければなりません。

 

「CKD診療ガイドライン2018」の改訂ポイント

 

日本腎臓学会は糖尿病性腎臓病(DKD)など新概念を加えて、5年ぶりに改訂された「CKD診療ガイドライン2018」を発表しました。

専門医への紹介基準の明確化

腎機能は加齢や合併症の進行に伴って低下し、特に我が国では65歳以上の男性の約30%、女性の約40%がCKD患者となるという報告があります。

CKDはどこの診療科であっても遭遇する病態ですが、これまで腎臓内科専門医へ紹介すべき状態の明確化がなされておらず、かかりつけの病院へ定期通院している患者さんであっても早期介入が遅れてしまうことが多々ありました。

2018年のCKD診療ガイドライン改訂によって、専門医への紹介基準が明確化され、腎機能障害のある患者さんについて内科以外の医師による取り扱いが簡潔になりました。

 

紹介すべき専門医について

A. 原疾患を問わず、以下の場合腎臓専門医・専門医療機関へ紹介となります。

  1. 血尿、蛋白尿、腎機能低下の原因精査
  2. 進展抑制目的の治療強化(治療抵抗性の蛋白尿、顕性アルブミン尿、腎機能低下、高血圧に対する治療の見直し、二次性高血圧の鑑別など)
  3. 保存期腎不全の管理、腎代替療法の導入

 

B. 腎臓内科医・専門医療機関の紹介基準に当てはまる場合で、原疾患に糖尿病がある場合にはさらに糖尿病専門医・専門医療機関への紹介を考慮します。

 

C. それ以外でも以下の場合には糖尿病専門医・専門医療機関への紹介を考慮します。

  1. 糖尿病治療方針の決定に専門的知識(3ヵ月以上の治療でもHbA1cの目標値に達しない、薬剤選択、食事運動療法指導など)を要する場合
  2. 糖尿病合併症(網膜症、神経障害、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患など)発症のハイリスク患者(血糖・血圧・脂質・体重等の難治例)である場合
  3. 上記糖尿病合併症を発症している場合

 

蛋白尿区分

まず、蛋白尿区分については尿蛋白定量と尿中クレアチニン(Cr)測定により尿蛋白/Cr比(g/gCr)を算出し、以下のように分類されました。
 0.15 g/gCr未満をA1(正常)
 0.15 ~0.49 g/gCrをA2(軽度蛋白尿)
 0.5 g/gCr以上をA3(高度蛋白尿)

 

専門医・専門医療機関への紹介が推奨される場合

顕性アルブミン尿(微量アルブミン尿300 mg/gCr以上または持続性蛋白尿0.5 g/gCr以上)がある場合(蛋白尿区分 A3):
 全例

微量アルブミン尿がある場合(蛋白尿区分 A2):
 ステージG1(GFR≧90)、G2(GFR60~89)で血尿がある場合
 G3a(GFR45~59)以上の場合

尿アルブミン/クレアチニン比が30 mg/gCr未満の場合(蛋白尿区分 A1):
 ステージG3aの40歳未満の場合
 G3b(GFR30~44)以上の場合

なお、これまでのCKDのステージ分類は3つのGFR区分(50~59 mL/分/1.73m²、40~49 mL/分/1.73m²、30~39 mL/分/1.73m²)で定義されていましたが、2018年のガイドライン改訂によりこの区分は撤廃されました。

75歳以上の降圧目標を緩やかに設定

「CKD診療ガイドライン2018」では、血圧の基準値を「糖尿病の有無」、「尿蛋白の有無」(軽度尿蛋白 0.15 g/gCr以上を「尿蛋白あり」と判定)、「年齢」(75歳で区分)の3つのポイントで定めています。

CKDが進行すると心血管疾患の発症リスクが高まることから、これまでCKD患者の降圧目標については日米の高血圧学会のガイドラインで130/80mmHg未満を降圧目標としていました。

しかし、80歳以上の120/60mmHg以下での血圧管理においては注意が必要です。

日本人を対象とした高齢者高血圧治療に関する大規模臨床試験の結果などでは、降圧レベルと心血管イベント発症の関連は単純な正相関ではなく、到達血圧が一定値を下回った場合にイベント発症がむしろ上昇するJカーブ現象を認めたという報告があり、今回のガイドライン改訂では高齢者の過降圧によるリスクを考慮し、降圧目標を140/90mmHgへ緩めることとなりました。

また、糖尿病がある場合については、75歳未満では、尿蛋白がある場合の降圧目標は従来通り130/80mmHg未満ですが、75歳以上では降圧目標を緩め、尿蛋白の有無に関わらず150/90mmHg未満と定めました。ただし、この場合でも起立性低血圧や急性腎障害などの有害事象がなければ、140/90mmHg未満への降圧を目指すことが推奨されています。

しかし、「高血圧治療ガイドライン2019」の改訂でも書いたように、日本高血圧学会が提案する降圧目標とは異なるため、注意が必要です。

 

高齢者CKDの治療ではフレイル、低血糖に注意

2017年の日本老年学会・日本老年医学会のワーキンググループの検討を受けて、従来は一般的に65歳以上とされていた高齢者CKDの年齢について「75歳以上」と改訂されました。

また、治療方針の選択について「腎機能の評価のみならず、病歴、多発合併症(心血管疾患・悪性新生物・高度認知症・重度フレイルなど)、患者の社会的状況、予想される余命期間などを総合考慮し、また患者およびその家族との話し合いを通じた適切な意思決定に基づくべき」とし、
糖尿病を合併している75歳以上の高齢者CKD患者においては、血糖降下療法による重症低血糖や転倒のリスクに注意することが明記されました。

患者さんの中には糖尿病のコントロール指標となるHbA1c値は低いほど良いと勘違いしている方も多いですが、特に高齢者の場合は低血糖によるデメリットの方が大きく、低血糖の回避を最優先に治療を行う必要があります。

高齢者の血糖管理目標(HbA1c値の目標)について定められた目標値はなく、患者さんの年齢、病態、生活環境、認知機能、身体機能、併発疾患、周囲のサポート体制の有無、重症低血糖のリスク、余命など様々なこと考慮して、個別に治療目標を設定しなければなりません。

 

糖尿病性腎臓病(DKD)の概念を提示

「CKD診療ガイドライン2018」では、「糖尿病性腎臓病(DKD)」という新しい概念が誕生し、糖尿病性腎症(DN)との違いが明確化されました。

糖尿病性腎臓病(DKD)の概念について、以下に示します。

 

「糖尿病性腎臓病(DKD)」の概念

2017年10月に日本腎臓学会と日本糖尿病学会から「STOP‒DKD宣言」が出され、日本におけるDKDの実態調査と病態解明、治療法開発に両学会が協力して取り組むこととなりました。

 

DKDでは、DNの典型的な経過と異なり、顕性アルブミン尿を伴わないままGFRが低下するものが含まれます。また、DKDには糖尿病だけでなく、加齢や高血圧を背景とした動脈硬化や脂質異常症の関与が推定され、糖尿病の病態が関与するCKD全般を包括しています。

両学会はDKDの概念を作った上で、以下の点を推奨しています。

・糖尿病患者における尿アルブミン測定は、糖尿病性腎症の早期診断に有用であり推奨する。

・浮腫を伴うDKD患者において、体液過剰が示唆される場合にループ利尿薬投与は推奨される。

・糖尿病性腎症患者におけるHbA1c 7.0%未満の血糖管理は、早期腎症から顕性腎症への進行を抑制するために推奨されるが、顕性腎症期以降の進行抑制に関するエビデンスは不十分である。

ただし、「多因子の厳格な治療を推奨することで、投与薬剤数の増加や薬剤に関連する低血糖、過降圧、浮腫、高カリウム血症などのリスクが高まることにも注意が必要」。

 

集約的治療を推奨 多因子介入が効果的

集約的治療については、「糖尿病性腎症を含めた血管合併症の発症・進行抑制ならびに生命予後改善のために、複数の危険因子の集約的治療(適切な体重管理を含む生活習慣の修正ならびに血糖・血圧・脂質の適切な管理)は推奨される」と強調されています。

特に、糖尿病患者の治療として糖尿病性腎症(DN)を含めた血管合併症の発症・進行と総死亡率の抑制のために、以下の多因子介入による集約的治療が推奨されています。

・ 標準体重(BMI 22)と生活習慣の修正(適切な体重管理、運動、禁煙、塩分制限食など)
・ HbA1c 7.0%未満
・ 収縮期血圧 130 mmHg未満かつ拡張期血圧 80 mmHg未満
・ LDLコレステロール 120 g/dl、HDLコレステロール 40 mg/dl、中性脂肪 150 mg/dl未満(早朝空腹時)

 

ただし、「DKDに含まれる顕性アルブミン尿を伴わないGFR低下例の発症・進行抑制における集約的治療の有効性は、今後の検討課題である」として、今回のガイドラインで新概念として加えられた糖尿病性腎臓病(DKD)の治療・管理については今後確率される予定です。

 

CKDのある女性を対象とした「妊娠」

「CKD診療ガイドライン2018」では、CKDのある女性を対象とした「妊娠」に関する章も追加されました。

こちらについては既に発刊されている「腎疾患患者の妊娠:診療ガイドライン2017」や「妊娠高血圧症候群の治療指針2015」、「高血圧治療ガイドライン2014」に準じており、以下のようにCKD患者が妊娠した場合の合併症のリスクや推奨される降圧薬について明記されています。

・CKDステージG1から妊娠合併症(妊娠高血圧腎症、早産、胎児死亡など)のリスクは上昇し、ステージが進行するほどそのリスクは高まる。

・CKD患者に限らず、妊娠中に使用できる降圧薬は、メチルドパ、ラベタロール、ヒドララジンであり、妊娠20週以降であれば徐放性ニフェジピンが使用できる。
妊娠が判明した時点でACE阻害薬、ARBは使用しない。

 

受診の必要性

 

腎臓病は病院へ受診し、血液検査から得られる情報によってある程度の診断をつけることが可能です。

しかし、確定診断をつけるためには画像検査や腎生検を行い、病理診断が必要となる場合もあります。

一般的な健康診断で行われる尿検査や血液検査で異常が指摘された場合、症状が出現するまで放置すると手遅れとなり将来透析が必要となるかもしれません。

病院へ行くのは面倒だけど少しでも不安なことがございましたら、当サイトのカウンセリングサービスをご利用ください。




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