脂質異常症

non-HDLコレステロール (non-HDL-C)の有用性

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non-HDLコレステロール (non-HDL-C)とは

non-HDLコレステロール(non-HDL-C)は、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」の改訂で脂質異常症の診断基準に新たに追加された項目なので、あまり聞きなじみはないかもしれません。

non-HDL-C値は、TC値からHDLコレステロール(HDL-C)値を引いた値です。

 non-HDL-C値 = TC値 - HDL-C値

善玉コレステロールであるHDL値の影響を除外したものであり、LDL以外の動脈硬化の惹起性が高いとされるリポ蛋白である、IDL、VLDL、レムナント、small dense LDL、Lp(a)などを総合的に判断できる指標として有用なことがわかりました。

 

Health Professional Follow up Studyによると、

「non-HDL-C値は、LDL-C値よりも心血管イベントの発症リスクと相関が強く、non-HDL-C値が高ければ高いほど心血管イベントが上昇する」

という研究結果が明らかとなりました。また、Womenʼs Health Studyでは、

「non-HDL-C値は、LDL-C値よりも心血管イベントの予測因子としても重要であった」

という報告や、「LDL-C値よりもより鋭敏な指標であった」という報告も増えています。

 

我が国においてはnon-HDL-C値の研究はまだ不十分であるものの、2009年のJournal of the American College of Cardiology(JACC)という雑誌には、

「non-HDL-C値を1%下げると、心血管イベントが1%低下する」

という記載もあります。

 

non-HDL-C値が注目された背景

non-HDL-C値が注目された背景には、以下の理由があります。

<理由 1>

動脈硬化の促進因子として重要なLDL-C値は日常診療で測定されるが、各メーカーの検査機器によって測定値にばらつきがあることがわかり、LDL-C値は以下のFriedewaldの式(F式)で示される計算式によって評価することが推奨されたが、計算式が煩雑であり日常診療で使用しづらい。

Friedewaldの式(F式) 
 LDL-C値 = TC値 - HDL-C値 - TG値/5

また、F式はVLDL-C値がTG値/5にほぼ等しいことに基づいて成立している計算式ですが、空腹時や食後の採血であっても、TG値が400 mg/dL以上の場合にはVLDL-C値が過剰に見積もられてしまうため本来の値よりも低く算出されることも問題でした。

<理由 2>

中性脂肪(TG)が高いと、動脈硬化の惹起性が高いとされるレムナントやsmall dense LDLと呼ばれるリポ蛋白が高値となるが、LDL-C値のみの測定ではこれらの重要なリポ蛋白を評価できない。

 

non-HDL-C値を測定するメリット

臨床現場でnon-HDL-C値を測定するメリットとしては、主に以下の4つがあります。

  1. 日常診療で測定されるTC値およびHDL-C値から簡単に計算できる。
  2. TC値およびHDL-C値は、TG値と異なり食事による影響が少なく、空腹時採血を守ることができなくても適切に評価できる。
  3. 血清TG値 400 mg/dL以上の高TG血症においても、non-HDL-C値を指標とすることができる。
  4. インスリンの絶対的あるいは相対的不足による糖尿病や、メタボリックシンドロームに起因する脂質代謝異常として特徴的な、高TG血症、低HDL-C血症が目立つ脂質異常症の管理には、LDL-C値よりもnon-HDL-C値が適切に評価しやすい。

 

non-HDL-C値を下げる治療

non-HDL-C値を特異的に下げる薬剤はありませんが、脂質異常症に対して一般的に使用されるスタチン、フィブラート、ニコチン酸、DPA/EPAの使用によって脂質バランスを改善することで、non-HDL-C値を下げることができるといわれています。

 

non-HDL-C値は脳血管障害の指標にもなるのか?

non-HDL-C値は動脈硬化の指標であるため、動脈硬化性疾患全般において重要かというと、そうでもなさそうです。

心血管イベントに対しては相関が強く良い指標となることは明らかですが、

脳血管障害については、コレステロールよりも高血圧の影響が大きいという報告があり、脳血管障害のイベント発症については予測因子とはならないということもいわれています。

しかし、閉塞性動脈硬化症など末梢動脈疾患については、ある程度有用な指標になると考えられています。

 

「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」から新たに診断基準へ追加されたことで、ますます研究が進みデータが集積されるnon-HDL-C値には今後も注目です。




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