脂質異常症

肥満と脂質異常症

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BMIの上昇に伴って血清中性脂肪(TG)値は増加し、血清HDLコレステロール(HDL-C)値は低下することが世界中の疫学研究から明らかとなっています。

一方で、血清総コレステロール(TC)値および血清LDLコレステロール(LDL-C)値はBMIとの相関が弱いといわれています。

 

肥満によって引き起こされる脂質異常症は、高TG血症と低HDL-C血症が特徴的とされますが、これは内臓脂肪の蓄積やインスリン抵抗性により肝臓から過剰にリポ蛋白が産生されることで、リポ蛋白を代謝するリポ蛋白リパーゼなどの酵素作用が減弱し、TGを多く合むリポ蛋白の代謝が滞ることによると考えられています。

 

HDLコレステロール (善玉)を増やすにはの記事でも書いたように、肥満によって量的異常とともに質的異常も生じ、脂質代謝においてレムナント、酸化LDL、small dense LDLといった動脈硬化を引き起こすリポ蛋白が出現することで、脂質異常症を発症するといわれています。

 

脂質異常症への減量効果

糖尿病を合併した症例やメタボリックシンドロームにおいて、長期的な体重減少やウエスト周囲長の低下とともに、HDL-C値は上昇し、LDL-C値やTG値は低下するといわれています。

我が国におけるメタボリックシンドロームを対象とした積極的保健指導プログラムの成績からは、

3%以上の体重減少によって高TG血症、低HDL-C血症が改善することが明らかとなり、肥満がもたらす脂質異常症は、減量治療によって早期から改善することが期待されます。

 

なお、急激な減量を行うと、HDL-C値は一過性に低下し、3〜4ヵ月後から上昇すると報告されていますが、HDL-Cには「量より質」という考え方があり、一時的なHDL-C値の低下を不安視する必要性はないと考えられます。

減量を開始する際の目標としては、体重やウエスト周囲長を3%減少させることを、開始時より3〜6ヵ月間の目標とすることが推奨されています。

 

脂質異常症への食事による効果

伝統的な日本食は脂質異常症のみならず、動脈硬化性疾患の予防においてその他のリスク因子も改善させることがわかっており、日本食は世界的にも推奨されている食事です。(ただし、食塩摂取量が多くなりやすいことは血圧管理において問題となります。)

 

糖質の摂取と脂質異常症は関係がないと認識している患者さんは多いですが、糖質の過剰摂取はインスリン分泌を促進させ、インスリンはブドウ糖からTG合成を促進させる「同化ホルモン」であるため、最終的に脂肪蓄積を生じて脂質異常症の発症につながります。

 

肥満の解消には、標準体重と日常生活における活動量を基準に、総摂取エネルギー量を適正化することが重要ですが、一般的には現状の摂取エネルギーから1日250 kcal分を減じることが推奨されます。

 

高LDL-C血症の場合には、飽和脂肪酸の摂取量を減らし、不飽和脂肪酸の摂取量を増やすことが有用ですが、同時にコレステロール摂取を制限し、食物線維の摂取を増やすことも重要です。

高TG血症の場合には、糖質やアルコールを制限し、n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やすことが効果的です。

 

なお、低HDL-C血症の場合には、トランス脂肪酸の摂取を避け、食事療法にフォーミュラ食(バランス食)を取り入れることでTG値およびHDL-C値が改善するとの報告がありますが、HDLコレステロール (善玉)を増やすにはの記事でも書いたように、一般的にはLDL-CやTGの割合を減らすことで、結果的にHDL-Cの比率を高めて脂質のバランスを改善することができます。

 

脂質異常症への運動による効果

脂質異常症に対する運動療法では、継続的な身体活動や有酸素運動が動脈硬化の予防や脂質代謝の改善に有効です。

特に、HDL-C値の増加は血液中のその他の脂質成分と比べて運動による効果が得られやすく、強度が中等度の有酸素運動を毎日30分以上続けると効果的とされています。

 

有酸素運動の効果を検討した25件のランダム化比較試験を行ったメタアナリシスの研究結果からも、HDL-C値を上昇させるには運動強度や頻度を増やすことよりも、毎回の運動持続時間を長くすることが効率的であり、運動量の合計として週120分程度が必要であると報告されています。

 

脂質異常症に薬物療法を検討する場合

生活習慣の改善のみでは脂質管理が不十分であった場合は、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」の改訂ポイントの記事で書いたように、個人のリスク区分に応じて管理目標を設定し、薬物療法を検討します。

高LDL-C血症の治療薬としてはスタチン系薬が推奨され、低HDL-C血症を伴う高TG血症にはフィブラート系薬やニコチン酸誘導体などの薬物療法を検討します。

 

また、喫煙はHDL-C値を低下させ、TG値および血糖を上昇させ、高血圧の原因にもなり動脈硬化のリスク因子と相乗的に悪影響を及ぼすことから、全ての症例において禁煙は非常に重要です。

 




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