高血圧

肥満と高血圧

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肥満があると血圧を正確に測れない?

肥満の人で上腕周囲に皮下脂肪が多く蓄積している(上腕周囲長が大きい)場合、通常の血圧計では正常に測ることができず、血圧値を過剰評価する可能性があります。

そのため、肥満で上腕が太い場合はカフのゴム嚢の幅が上腕周囲長の40%、かつ長さは少なくとも上腕周囲長の80%以上を取り囲むことが肥満者の正確な血圧測定には必要であり、成人用の大型カフを使用します。

 

肥満者における高血圧の診断は、「高血圧治療ガイドライン2019」の改訂に向けての記事にも書いたように、通常の高血圧治療ガイドラインと同様の診断基準が用いられ、心血管疾患の発症リスク予防の観点から定義されています。

 

高血圧が、心血管疾患、慢性腎臓病(CKD)、血管性認知症、日常生活動作(ADL)の低下などの発生リスクを上昇させ、死亡率を上げることは、過去の疫学研究からも明らかです。

以前は、我が国の高血圧の特徴として、食塩摂取量の多いやせた患者さんが多い傾向がありましたが、近年は欧米文化の流入によって肥満を伴う高血圧患者さんが増加しています。

循環器疾患基礎調査の解析であるNPPON DATAで高血圧に対する肥満の寄与を調査したところ、1980〜2010年の30年間に男性では11%から27%に、女性では19%から26%に増加していました。

これはメタボリックシンドロームの増加を反映し、同時に、高血圧はメタボリックシンドロームを構成する因子の中で最多という結果になりました。

また、肥満者における高血圧の発症率は非肥満者の2〜3倍に上昇し、特に若年期から肥満であったり、若年期から中高年にかけての体重増加が大きい場合、高血圧を発症することが多いといわれています。

 

肥満がもたらす血圧への影響

肥満によって高血圧が生じる理由は、交感神経系の亢進や、ナトリウムの貯留、食塩感受性の存在、インスリン抵抗性と高インスリン血症の関与が示唆されています。

一方、頸部周囲への脂肪蓄積によって気道が圧迫されると、睡眠時無呼吸症候群を合併することもあり、これが高血圧の発症や増悪の原因となることもあります。

また、肥満を伴う高血圧との鑑別も重要であり、クッシング症候群、先端巨大症などの内分泌性高血圧を生じる二次性肥満の場合は、原因となる疾患への治療が必要です。

 

肥満+高血圧の薬物治療について

降圧薬の種類と使い方の注意の記事にも書いたように、カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、少量の利尿薬などの主要な降圧薬を第一選択薬として、個々の病態に応じて薬物治療を開始します。

 

肥満症では糖代謝異常(インスリン抵抗性)や脂質代謝異常の改善という観点から、ARBやACE阻害薬が推奨されており、β遮断薬は糖代謝・脂質代謝を増悪させる副作用が懸念されるため慎重投与とします。

また、肥満症を伴う高血圧では、3剤以上の降圧薬を併用しても管理目標を達成できない治療抵抗性高血圧(難治性高血圧)もしばしば存在し、心血管疾患の高リスク群において、ACE阻害薬に長時間作用型Ca拮抗薬ないしサイアザイド系利尿薬を併用した際の有用性を検討したACCOMPLISH試験では、

「Ca拮抗薬は利尿薬と比較して心血管疾患の発症を有意に低下させたが、BMI ≧30 kg/m2の肥満症に限定した場合、Ca措抗薬と利尿薬の効果は同等であった」

との研究結果が出ています。

したがって、ARBやACE阻害薬によって十分な降圧作用が得られない場合には、長時間作用型Ca拮抗薬またはサイアザイド系利尿薬の併用を考慮することが推奨されています。

また、治療抵抗性高血圧の場合は、β遮断薬、α遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬の中から病態に応じて追加を検討します。




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