高尿酸血症・痛風

肥満と高尿酸血症

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高度肥満症では、高尿酸血症の合併が高率に認められます。

これは、腎臓での身体の老廃物を排泄する能力を示す「クレアチニンクリアランス(Ccr)」からも明らかであり、肥満患者さんの入院時の尿酸クリアランス(Ccr比)は著しい低下が認められます。

高尿酸血症を生じる機序としては、「尿酸排泄低下型」「尿酸産生過剰型」、および両者の混在した「混合型」の3つがあり、肥満に起因する高尿酸血症の場合は「尿酸排泄の低下」が主な原因と考えられています。

また、肥満のタイプを腹部CTを用いて診断し、皮下脂肪型および内臓脂肪型に分類した場合、両者ともに健常者と比べて尿酸クリアランスの低下を認め、高尿酸血症を伴う皮下脂肪型肥満の80%に尿酸排泄低下を認めました。

ちなみに、高尿酸血症・痛風の治療の治療ガイドラインでは、プリン食制限下における絶食飲水負荷時の尿中尿酸排泄量 > 0.51 mg/kg/h の場合を「尿酸産生過剰型」と定義しています。

 

肥満で尿酸排泄低下が生じる機序

肥満に起因する尿酸排泄低下の機序として、Facchiniらはインスリン抵抗性と尿酸クリアランス低下が相関することを最初に報告し、その後の研究で

インスリンは腎臓でのナトリウム再吸収と共役して尿酸の再吸収を促進する」ことが明らかとなりました。

以上からまとめると、肥満ではインスリン抵抗性によって高インスリン血症となりますが、

腎臓の近位尿細管ではインスリン抵抗性がない(=インスリンが作用する)ために、高インスリン血症に伴い尿酸の再吸収が亢進し、結果的に尿酸排泄が低下する

ということが推察されます。

 

糖尿病が高尿酸血症を引き起こす?

上記のような機序で肥満と高尿酸血症が関係するのであれば、

「同じく高インスリン血症を生じる糖尿病ではどうなのか?」

という疑問を勘の良い方は持たれるかもしれません。

全くその通りであり、高尿酸血症は2型糖尿病の独立した危険因子として知られ、

「血清尿酸値が1 mg/dL上昇すると糖尿病の発症リスクが6%上昇する」

という研究結果が、7つの前向き研究(総数32,016例)をまとめたメタ解析で報告されています。

 

上記のように、高尿酸血症・痛風はインスリン抵抗性を背景に発症することが多いのは事実ですが、一方で、内臓脂肪型肥満の約44%に尿酸産生過剰が関与していたという報告もあり、体脂肪分布の違いによって尿酸代謝異常のメカニズムも異なる可能性が示唆されています。

したがって、食事療法、運動療法、薬物治療による血清尿酸値の管理を行うと同時に、肥満症以外にも高尿酸血症の原因となる病気や生活習慣がないかを検索する必要があります。

 

高尿酸血症への食事による効果

肥満症患者さんに6ヵ月間の生活習慣の改善を行い、体重が3%以上減少すると内科的疾患の指標となる様々な数値が全体的に改善するとともに、血清尿酸値も有意に低下することが知られており、減量を開始する際の目標としては、体重やウエスト周囲長を3%減少させることを、開始時より3〜6ヵ月間の目標とすることが推奨されています。

 

食事制限をがんばると血清尿酸値が上昇します。

肥満症においてエネルギー制限食で減量治療を行うと、通常は体重減少に伴って血清尿酸値は低下します。

ただし、超低エネルギー食によって厳格な食事制限を行なった場合は一過性に血清尿酸値が上昇することがあり、これは食事制限に伴って水分摂取量も減少しやすく、脱水状態となることで腎臓からの尿酸排泄が低下するためと考えられます。

しかしこの場合は、前述した肥満症に伴って生じる、いわゆる「尿酸排泄低下型」とは異なる機序であり、長期的にみるといずれ血清尿酸値は低下するため、やはり減量治療が推奨されます。

 

また、飲酒が血清尿酸値に与える影響は、飲酒と尿酸の関係の記事でも書いたように、アルコール摂取そのものによる機序に加えて、高カロリーのアルコール類は肥満を助長することから、飲酒は控えるようにしましょう。

 

高尿酸血症への運動による効果

無酸素運動をきたす過度の運動は、プリンヌクレオチトドの分解が亢進して尿酸産生が増加し、血清尿酸値の上昇につながるため控えることが推奨されます。

一方、有酸素運動は血清尿酸値に影響を与えず、メタボリックシンドロームの構成因子となる種々の病態を改善させることが知られています。

なお、肥満関連疾患の合併が疑われる場合は運動制限のかかることがあるため、運動療法を開始する前に心機能や整形外科的疾患の評価を行うことが望まれます。

 

高尿酸血症に薬物療法を検討する場合

食事および運動療法を開始しても血清尿酸値の改善が乏しい場合には、血清尿酸値の目標値 「6-7-8のルール」にしたがって薬物療法の開始を検討します。

薬物療法は高尿酸血症の病型に応じて選択する必要がありますが、肥満があるからといって「尿酸排泄低下型」に対する治療薬を処方するのではなく、個々の病態に応じた薬物治療を検討します。

 

機序から選択する薬物療法

尿酸産生過剰型には、尿酸産生抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタット)を、
尿酸排泄低下型には、尿酸排泄促進薬(プロベネシド、ブコローム、ベンズブロマロン)を選択します。

ただし、尿酸排泄促進薬は尿路結石の合併や既往歴がある場合、あるいは中等度以上の腎障害(クレアチニンクリアランス < 30 mL/分 または 血清クレアチニン > 2 mg/dL)では、尿中尿酸排泄量を増加させ、これらの合併症を増悪させる危険性があり、病型に関わらず尿酸産生抑制薬を選択します。

 

尿中pHを適正化させる薬

上記の薬物療法の他に、尿酸排泄が増加した際に尿路結石を作らないように、尿中pHをアルカリ化させるための酸性尿改善薬も使用される場合があります。

ただし、尿をアルカリ化しすぎるとカルシウム塩の溶解度が低下し、カルシウム結石が作られる危険性が高まります。

したがって、尿中の至適 pHは6.0〜7.0 とされています。

 

食事療法や運動療法などの生活指導は、一定期間は有効ですが長期的には多くの場合にリバウンドを招きやすいです。

肥満の存在に加えて、生活習慣となっている高プリン体食の嗜好や飲酒、運動不足が高尿酸血症に対してどのような影響を及ぼすのかを理解し、自発的に食事や運動、飲酒量に注意を払えるよう努めなければなりません。




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